借金の時効

実は借金にも時効があります。
条件を満たすことができれば、お金を返さず、債務整理もせずに借金を踏み倒してしまうことのできる仕組みが存在します。
しかし、仕組みとしては存在していますが、実際に借金の時効を成立させるのは非常に難しいです。

 

今回は、借金が時効になる方法と、なぜ実際には時効で借金をなくすことが難しいのかについて解説します。

 

借金をなくす2つの方法

借金の返済が困難になり、どうしても支払いできなくなった時に取れる手段は2つあります。
一つは債務整理、もう一つは今回説明する「時効援用」です。

 

債務整理にはいくつかの方法がありますが、借金を全て解消する自己破産をした場合、生活や仕事に必要な物品以外の財産は全て没収されます。
信用情報に債務整理をした情報が残るため、しばらくの間はクレジットカードを作ることもローンを組むこともできません。
生きていくのに必要最低限のものは残されますが、生活は決して楽なものではありません。

 

もう一つの時効援用は、必要期間借金を返さず逃げ、時効を成立させたあと、相手に時効を伝える「援用」をするというものです。一定期間過ぎるだけは不十分で、相手に時効を宣言して初めて借金の踏み倒しが成立します。
この時効を成立させるのが非常に難しく、時効援用を故意に行うのはほぼ不可能です。

 

時効援用に必要な条件

時効援用のためには、以下の3つの条件が必要です。

 

・返済を一切していない
・時効に必要な期間が経過
・相手に時効を伝える

 

時効に必要な期間が経過

借金の時効を成立させるには、まず犯罪の時効と同じように、一定期間の経過が必要です。
必要期間は借入先や借入目的によって異なります。

 

・キャッシングや自動車ローンなどの個人向け融資:5年
・個人が事業のために借りたお金:5年
・信用情報、信用組合、保証協会から(事業資金以外のために)借りたお金:10年
・知人など個人から(事業資金以外のために)借りたお金:10年

 

たった5年と思うかもしれませんが、現実的には、実時間の5年で時効とするのは難しいです。時効に必要な5年間のカウントは、様々な理由で中断したり、カウントがゼロに戻ったりしてしまうからです。

 

催促されると時効が中断する

借金の返済が遅れると、まず電話で返済を促す連絡があります。その後も支払いを放置すると、今度は手紙で催促状が届きます。
催促の手紙を送ったことが証明できるように、内容証明郵便を使って催促状を送ることが多いです。

 

催促状により支払いを催促すると、その後6ヶ月間時効のカウントが中断します。
催促状が届いた場合、この6ヶ月の間に裁判が起こされるとみて間違いありません。催促状を送ってから半年以内に裁判を起こさなければ、時効のカウントを巻き戻すことができなくなってしまうためです。

 

裁判になると時効のカウントはゼロに戻る

催促状を送っても債務者からの反応がない場合、債権者は支払いを求めて裁判を起こします。

 

裁判を起こすと時効のカウントはゼロに戻ると同時に、時効に必要な期間が5年から10年延長されます。
4年11ヶ月経過したところで裁判となった場合、さらに10年経過しなければ時効成立にならなくなります。最後の返済から数えると、およそ15年の間借金から逃げ続けることが必要になります。

 

裁判となった場合、相手が悪徳業者でない限り、債務者に勝ち目はありません。おとなしく借金を返すか、債務整理を行うかのどちらかしかありません。
裁判から逃げても意味はありません。裁判所からの通知を無視して逃げれば負けが確定してしまいますし、引っ越しでも居場所は裁判所にバレてしまいます。

差し押さえが行われるとカウントがゼロに戻る

差し押さえには2つの方法があります。

 

一つは裁判所を通す方法です。裁判所で所定の手続きを踏むと、相手の財産の差し押さえができるようになります。
もう一つは、公正証書を契約時に作成している場合に可能になる方法で、裁判所を使わず直接差し押さえができます。

 

物品を差し押さえるのは手間がかかり、お金にするのも面倒なため、基本的に差し押さえとなるのは給料です。給料の差し押さえが決まった場合、その旨が勤務先に伝わることになります。

 

 

 

時効の成立にはまず時間の経過が必要ですが、カウントは債権者の行動で中断したり巻き戻ったりします。5年は短いように見えますが、実際に5年分のカウントを経過させるのは大変です。

 

返済を一切していない

借金の時効を成立させるための重要なポイントとして、返済を一切しないというものがあります。

 

基本的に、借金の時効は最後の返済からカウントが始まります。その後時効の成立を待つ間、一度でも返済をしてしまうと、時効のカウントがリセットされるばかりか、時効援用できなくなってしまいます。

 

借金を一円でも支払うと、「この借金は自分のものです」と認めたことになります。一度債務を承認してしまうと、時間が経過しても時効援用が認められなくなってしまいます。

 

返済が遅れると、「利息だけでも返して欲しい」「1000円だけでいいから返済して欲しい」と債権者が言うことがありますが、これは優しさで言っているのではありません。時効援用させないためのテクニックなのです。
裁判や差し押さえは、時効を確実に停止させる強力な手段ではありますが、実行するには人でも手間もお金もかかります。そのため手間もかからず簡単な「債務の承認」をさせることで時効援用を阻止するのです。

 

また、支払いだけでなく、催促に反応することでも債務の承認だと判断される場合があります。返済する気がなくても催促状に反応したり、債権者に連絡を取ったりすると、時効援用が認められにくくなります。

 

相手に時効を伝える

幸運なことに必要な時間分借金から逃げおおせても、それだけでは借金を帳消しすることはできません。時効援用の「援用」である、相手に時効を宣言することが必要になります。
借金は時効でありもう返済する意志はない、と連絡して初めて時効援用となります。

 

借金の時効を債権者に伝える方法について、決まった手続きはありません。通達したことを後から証明できるように、内容証明郵便を使うのが良いとされています。
必要な期間が経過した上で、援用の手続きをされた場合、債務者は時効援用を認めなければなりません。

 

ただし、時効に必要な期間が経過していないにもかかわらず、債務者が時効援用はのつもりで債権者に連絡を取ってしまうと、先に述べた「債務の承認」とみなされ、かえって時効援用ができなくなってしまう場合もあります。
相手への通達は、確実に時効が成立したことを確認してから行わなければ危険です。

 

時効援用するとどうなる?

時効援用が成立すれば、晴れて借金は消滅します。
自己破産と違い、財産を没収されることもありません。

 

しかし、借金は消えても、信用情報についての問題が解決されるかどうかは分かりません。

 

借金の返済が遅れた場合、信用情報には延滞をしたことが登録されます。
延滞の登録があると、ローンを組んだりクレジットカードが作れなくなったりします。俗に言う、ブラックリスト入りの状態です。こうなるとお金を借りたり分割払いしたりすることはできなくなり、全てを現金払いで乗り越えなければなりません。

 

時効援用した場合、延滞の情報をどうするかについての決まりはありません。解消してくれる金融機関もあれば、延滞のままの場合もあります。どうするかは金融機関のさじ加減一つです。
基本的に、信用情報は情報が登録されてから一定期間が経過すると削除されるため、延滞の情報も5年ほど経てば解消されます。

 

しかし、たとえ信用情報から削除されても、債権者が独自に持っているデータには時効の記録が残ります。
下手をすると、数年どころか一生ローンを組めなくなる可能性さえもあります。

 

借金の時効は難しい

時効により借金を帳消しにする仕組みは存在しますが、実際にそれを成立させるのは茨の道です。

 

時効援用のためには、時効に必要な年数を経過させた上で、相手に時効を通達しなければなりません。
しかし、時効に必要な年月のカウントは、返済の催促や裁判、差し押さえなどで簡単に中断・巻き戻しになります。
しかも、時効を待つ間一円でも支払ってしまったり、債権者と連絡を取ってしまったりすると、時効援用が認められなくなってしまいます。

 

やっとの思いで時効を成立させても、信用情報に傷が残るケースも多く、社会生活が困難になってしまう可能性が高いです。

 

時効を狙うよりも債務整理の方が早い

債務整理をした場合、信用情報にその記録が残るのは5年から10年です。保存期間が過ぎれば、またローンを組んだり、クレジットカードを作ったりできるようになります。
自己破産をすれば財産を失ってしまいますが、手続きさえ終ればその後は普通に生活ができます。

 

時効援用の場合、まず時効に必要な期間が過ぎるまで催促から逃げ続けなければなりません。
時効になるのは5年ですが、様々な要因でカウントが止まったり巻き戻ったりするため、それ以上の期間が必要になると考えておくべきでしょう。5年経過する直前の所で催促し、その後裁判を起こせば、時効までの実時間は15年6ヶ月弱まで引き伸ばせます。
時効援用が適用できても、その後最低でも5年間は信用情報に記録が残ります。

 

比較してみれば、さんざん逃げ回って時効援用するよりも、さっさと債務整理してしまった方が賢いのは一目瞭然です。
債務整理なら10年で信用情報も綺麗になり、再びローンを組んだりクレジットカードを使ったりできるようになります。しかし、時効援用の場合は最長で20年近く不便な生活を強いられてしまうのです。

 

山奥に引きこもり、社会と縁を切った仙人のような生活をするつもりでない限り、わざわざ困難な時効援用をする理由はありません。
時効援用は簡単に借金を踏み倒せる仕組みに見えて、故意に利用すようとするとまっとうな社会生活を長期間困難にしてしまう可能性がある恐ろしい仕組みです。

 

まともに社会生活を送りたいのであれば、素直に債務整理をした方が早く安定した生活をおくれるようになるでしょう。